「コラム」商店街巡り(第3回)
- tokyo.kinryokai
- 3月9日
- 読了時間: 4分
門田睦雄(昭和40年卒)
神田神保町 篇 (2)すずらん通り側

神田神保町の2回目は靖国通りと並行した裏の通り「すずらん通り」です。先ずは先週分も含めて、各所の位置関係が理解できるよう、略図を作りましたので、以下をご覧ください。図の上の方が駿河台で高く、図の下に行くほど低くなっています。

「すずらん通り」には靖国通り側ほど古書店はないのですが、色々な種類の店が並ぶ、クラシックでアカデミックな雰囲気の通りです。そして車の交通量が非常に少ないので、歩行者が安心して歩ける、ヒューマンスケールの街です。以下、商店の種類ごとに見て行きましょう。

(左)すずらん通り東の入り口。右側の仮設外壁が工事中の三省堂ビル。
(右)通りの幅はヒューマンスケールで、車の通りも少なく、いつも歩行者天国的な雰囲気がある。
大型書店としては「三省堂書店」があったのですが今建て替え中で、完成すれば上部がオフィスの書店になるはずです。もう一つは老舗の書店・取次店「東京堂書店」で、外壁に大きなレリーフのある、クラッシックな建物は雰囲気がありますし、置いてある本の種類や配置も、“アカデミック”を感じさせます。小型古書店は、昔ながらに店頭に書籍を並べる店や、奥に喫茶室を設けた新しい試みの店など、“本の文化”を漂わせています。

(左)東京堂書店、1階にはカフェも。(右)クラシックな外壁と、知の象徴ふくろうを描いた格調高いレリーフが歴史を感じさせる。

(左右とも)書店喫茶。書籍の奥は喫茶、上階はカフェ。
文房具や画材などの店も数店あります。総合画材の「文房堂」は、絵の具をはじめとしてあらゆる画材をそろえ、建物自体がクラシックな3階建てでアートの香りが漂います。3階はカフェになっており、絵や外の眺めを楽しめるようです。額縁の専門店「清泉堂」は、ちょっとしたポスターでも、存在感のある美術品に変えてくれる魔法使いの雰囲気があります。

画材の文房堂(左)と額縁の清泉堂(右)。
この通りには多くの飲食店があります。中華料理店が多いのは、明治後半に多数の中国人が日本に留学し、彼らのための下宿や中華料理店がたくさんできたのが起源とのこと。魯迅や周恩来等が住まい、「維新號」(神保町が起源、今は無い)や、今もある「漢陽楼」などで食事をしていたと思うと、“坂の上の雲”の時代の日本が目に浮かびます。ちなみに、私のおすすめの店は「揚子江菜館」と「三幸園」。別店の餃子「三幸園」は夕刻から行列ができます。

左から、揚子江菜館、三幸園〈中華〉、三幸園〈餃子店〉。
中華料理の他にも新旧の色々な飲食店が並びます。古い代表格が天婦羅「はちまき」で、表には江戸川乱歩や海音寺潮五郎などの並ぶ東京作家クラブの宴会写真が飾られています。カツカレーが名物の「キッチン南海」は、最近少し位置を変えましたが、以前同様お昼には行列ができています。ロシア料理の「ろしあ亭」は長く営業していましたが、ロシアのウクライナ侵攻後客が減ったのか、閉店してしまいました。新しいところでは、居酒屋「魚金」、油そば屋、タレカツ屋など挙げきれないほどの店があります。

(左)天婦羅の「はちまき」。多くの文人が愛した老舗。暖簾の左が文人たちの集まり宴会の写真で、名前入り。
(右)キッチン南海、行列ができる人気店で、好まれるメニューはカツカレー。
忘れていけないのは、靖国通りとすずらん通りの間の細い路地にある昔懐かしい造りの店の幾つか。先ず喫茶店「さぼうる」。山小屋風喫茶店の雰囲気がそのまま残っており、今も客が絶えません。軽食と喫茶の「ラドリオ」の店内には懐かしいシャンソンが流れています。そしてこの雰囲気を踏襲するような喫茶店やバーも新しく出来、いい雰囲気の裏通りになっています。

(左)裏通りの喫茶「サボウル」雰囲気は内外とも昭和そのもの。
(右)同じく裏通りの喫茶「ラドリオ」 シャンソンと酒と軽食を楽しめる。
すずらん通りから路地を一つ入ると、小学館が経営する「神保町シアター」が独特の外観で建っています。地下の映画館は古い邦画専門で、1スクリーンですがテーマを決めて一日4本を上映する方式です。上映時間をずらすので、同じ時間に行けば毎日違う映画を見られる訳です。意外ですが、99席の会場は毎日結構な人が入っています。上階には吉本の喜劇劇場があり、若い人に人気です。

(左)神保町シアター外観。裏通りで異彩を放つ。
(右)シアターの邦画と吉本喜劇の案内。邦画は特集が組まれ、見逃した映画や、もう一度見たい映画を楽しめる。
この様に、すずらん通りは色々なジャンルの店が軒を接し、多様な文化を楽しめる街ですが、クラシックでアカデミックな雰囲気が漂うところが魅力です。神保町に興味が湧いたら、一度訪ねてみて下さい。
*写真はすべて筆者撮影。
*記事掲載:2025年3月9日
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