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「コラム」商店街巡り(第2回)

更新日:3月9日

門田睦雄(昭和40年卒)


神田神保町 篇 (1)靖国通り側



 衛藤広報部長が始めた「商店街巡り」ですが、第2回は私が引き受けます。今後、色々な方から、私の自慢の、大好きな、あるいは思い出の商店街の寄稿が続くとホームページが楽しくなるでしょう。


 神田神保町は古本屋で有名な街区で、最寄り駅は地下鉄3線(東京メトロ半蔵門線、都営三田線、都営新宿線)の神保町駅です。この街区を取り囲むのは、御茶ノ水、神田、大手町、九段で、このいずれからも近いということです。昔からのアカデミックな街区なので、広い層に人気があります。靖国通り側と一つ裏のすずらん通りがありますので、2回に分けてレポートします。第1回は靖国通り側です。


 幕末から明治にかけて、幕府・政府がこの地の周辺に高等教育機関を作ったことが、神保町に古書店街が形成されたきっかけとか。その意味でも、アプローチのお勧めは、JR御茶ノ水駅から駿河台の坂を下る路です。JR御茶ノ水駅を出ると、神田川の深い切れ込みの向こうは湯島や本郷になり、そこには江戸時代からの学問の場・湯島聖堂や、現在の最先端の学府「東京科学大学(東京工大と東京医科歯科大が合併した大学)」が橋の向こうに見えます。昌平黌(昌平坂学問所)は江戸時代にこの東京科学大学の辺りにあり、明治になってからは、医学所と併せて東京大学へと連なって行きます。


 ここから反対側に駿河台の坂を下ると、明治大学と日本大学が両側に見えます。中央大学も以前はここにありました。いずれも法学系で、NHKの朝ドラ「虎に翼」のモデルになった学校があったのもこのあたりです。形態の特徴は、街の中に幾つもの大学の建物が点在することで、街並みと一体になって数大学の施設が点在する姿は、シティキャンパスの名の通りです。個別の建物としては、明治大学のリバティータワーが出色です。レンガタイル張りのクラシックな雰囲気の超高層ビルですが、明治時代の雰囲気も漂わせるアカデミックな外観です。この施設が出来てから明治大学の人気が急上昇したというのも肯けます。

(左)明治大学・リバティータワー 各大学が東京郊外に移転する中、明治は都心に留まり、このビルで一気に人気が沸騰し、受験者数の大幅増加につながった。

(右)多くの文人が集まり、芥川賞や直木賞の選考の場であった「山の上ホテル」も駿河台の一角にあった。残念ながら今はもう閉館されている。


 この様に御茶ノ水には大学生が溢れ、彼らが書物を、それも安いものを求めたことで、神保町に古本屋が集積したのです。今でも神保町には古本屋が多いのですが、大半は靖国通りに面した側にあります。現在は古書といえどもオンラインで手に入る時代ですが、店頭に並べられた本を眺めていると、思いもよらぬ本を発見することもあり、店を訪れるのはこういう楽しい効果を期待する人たちでしょう。「武士の家計簿」の素となった古文書も、掘り出し物案内でそれらしい存在を知った磯田道史氏が、勤務先の茨城大から急遽ここに駆け付けて手に入れたそうです。

(左右とも)今でも色々なジャンルの古書店が並ぶ靖国通り。


 この地域には、御茶ノ水寄り、九段寄りの地区を含めて、最近ではカレーライスの店が競うように多数存在します。カレーグランプリという催しもあるようで、色々な種類のカレーライス店が競っています。私が好きなのは、欧風カレー「ボンディー」と「ガヴィアル」、インドカレー「エチオピア」、スマトラカレー「共栄堂」です。「ボンディー」は入居するビルの建て替えで現在閉店中ですが、再開を期待しています。この地域で独特なのは、カレーと共にゆでたジャガイモを、バターと共に出す店が幾つかあることです。食前に出るのでカレーができるまでのアピタイザーなのでしょうが、ジャガイモが2個出る店では、一つはバターで、もう一つはカレーに浸して食べるのが通とか。「共栄堂」ではコクのあるクリーム味のスープが先ず出てきます。

(左)先ずゆでたジャガイモが出て来る「ガヴィル」 神保町交差点の角のビルの2階にある。

(右)「エチオピア」などの、独特の味を売り物にするユニークなカレー屋が軒を連ねる。

(左)スマトラカレーの「共栄堂」は地下にあり、階段吹き抜けからの光を巧妙に使った空間構成もしゃれている。

(右)「共栄堂」売り物のジャワカレー。色はダークブラウン、味はリッチ&スパイシー。カップはスープ。


 この通りのもう一つの特徴は、スポーツ用品やアウトドア用品の店が多い事です。中央大学が八王子に移転してから、一気にスキー用品店が増えたといわれます。小川町方面にかけて「ヴィクトリア」「石井スポーツ」「ムラサキスポーツ」などの大型スポーツ店や多数のスキー、スノーボード専門店が並びます。山用品では「スノーピーク」や老舗「ニッピン」もここにあります。好きな人には一日居ても飽きないエリアでしょう。

(左右とも)スポーツ用品店は神保町から小川町にかけて並ぶ。冬季の店先にはスキーやスノーボードがびっしり。


 このエリアは駿河台の下に位置するので、お茶の水側に行くと、思いがけず急階段や急な坂を発見します。登ってみると展望が開けたり、こじんまりしたカフェがあったり、サプライズがあります。崖下の囲まれた小公園・錦華公園もその一つ、一息つくにはよい休憩所です。魯迅や周恩来もこのあたりを徘徊したのでしょう、周恩来の碑のある小広場もあります。

(左右とも)錦華公園脇の坂道。


 次回は、すずらん通り側です。


*写真はすべて筆者撮影。


*記事掲載:2025年2月9日

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