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「コラム」 私のおすすめ空間(第8回)

門田睦雄(昭和40年卒)



ソニーシティー大崎(現NBF大崎ビル)

 前回は福岡の「都市の里山・アクロス福岡」を紹介しましたが、今回は東京の環境建築、大崎駅前に建つ「ソニーシティー大崎」を紹介します。JR大崎駅を出ると、目の前に大きく見える、焦げ茶色グリッドの端正な外観のビルがそうです。もともとソニーの研究開発型オフィスだったのですが、その後ビルは売却されて名前が「NBF大崎ビル」に変わりました。しかし、現在もソニーグループにより使用されており、屋上のSONYの名称表示はそのままです。

左はJR大崎駅越し、右はJR大崎駅からの眺め。最近の総ガラス張りのビルとは異なる重厚さがある。SONYの表示は控えめだが存在感がある。


 このビルの特徴は、何と言ってもバルコニーの手すりに採用されたセラミック製のルーバー(格子)でしょう。中に水が流れ、それがセラミックの表面で蒸発する時に、周りの空気が冷やされます。25階建ての各層で順次下降する毎に冷却されるので、地上では気温より数℃冷たくなります。流す水は雨水を貯めたもので、循環ポンプは太陽光発電で得られた電力を使う、まさにエコ建築ですし、都市気候を積極的に改善する都市装置ともいえます。この仕組みは「バイオスキン」と呼ばれ、東側壁面全体に設置されています。

バイオスキンによる外装。目立たないがバルコニーになっており、セラミックはその手すりとして使われている。


バイオスキンの説明パネル(左)と、セラミックのディテール(右)


 この冷えた空気が到達する地上部は、こんもりした森になっていて、涼しい鎮守の森の中にいる雰囲気です。異常な暑さが続く最近の夏ですが、ここはヒートアイランドの中のクールスポット。この森は公開空地で大崎西口公園とも一体になっていて、一般の人も自分の庭のように立ち入れ、散策を楽しめます。色々な樹種が植わっているので、四季それぞれ目を楽しませてくれるでしょう。この小さな森は、ビルの足許を柔らかに囲みますが、ここに入ってしまうと、そのビルは目に入りません。

ビルの足許の小さな森。涼しい散歩道。


 セラミックからの蒸発熱による外部の空気の冷却という斬新なテクニック、それによるクールスポットの創出、ビルの足許の公開空地の緑化による森の出現、そしてセラミックを使ったバルコニーのデザイン性などが評価され、このビルは2014年の建築学会賞とBCS賞(建設業協会賞)を受賞しました。


以上

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