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「コラム」 私のおすすめ空間(第15回)

門田睦雄(昭和40年卒)


福岡銀行本店


 再び福岡に戻って、今回取り上げるのは「福岡銀行本店」です。天神地区の中央に位置し、周囲に独特の雰囲気を放っているのが、この建物です。1971年竣工ですからもう半世紀以上経ちますが、現役で「良い建物」を続けています。設計は黒川紀章氏で、彼のごく少ない傑作(私見)の一つです。

(左右とも)交差点側が一本の太い柱で、2方向が大きく開放されている。主役はこれによってできる半屋外空間。
(左右とも)交差点側が一本の太い柱で、2方向が大きく開放されている。主役はこれによってできる半屋外空間。

 何故傑作なのか、それは交差点に対して大きく開放し、周辺と一体となった豊かな空間を創っているからです。銀行というセキュリティーが優先しそうな施設にも関わらず、内外いずれからも視覚的に開放した空間で、市民の立ち入り自由です。まさに福岡が誇る「おらが空間」と言えるでしょう。完成当初は彫刻や石のベンチのあるやや硬い広場でしたが、改修を終えた今は、ゆったりしたカフェになっています。日本では気候面からなかなか屋外のカフェが普及しないのですが、ここは屋根があり、2方向が建物に守られ、しかも天井が極めて高いため、ほとんど屋外の様な半屋外なので、カフェには好都合です。福岡に行ったら、是非ここでコーヒーでも飲んで、リッチな気分を味わって下さい。

(左右とも)以前はやや硬かったアトリウムは、今は入り易いカフェに改修され、市民に開かれた場となっている。
(左右とも)以前はやや硬かったアトリウムは、今は入り易いカフェに改修され、市民に開かれた場となっている。

 建物としては、L字型の高層オフィスの上部に正方形の空間が載り、それを一本の大きな柱が支える構造です。プリミティブと言えばそうですが、それを石張りの重厚な外装で、洗練された空間にまとめ上げたところが、名建築と言われる所以です。また、民間建築でありながら、市民に開放する空間を認めた発注者の見識に敬意を表します。

 私は入ったことがありませんが、この開放広場の地階にはコンサートホールがあるそうで、大空間の上を荷重の少ない広場にしたのは、構造面でも合理的な設計です。福岡が大都市として飛躍する時に、この建物は都市計画の中核施設として、大きく貢献することでしょう。

(左)アトリウム側から外を望む。柱の大きさがよく分かる。(右)同じくアトリウム内部より、向かいの天神ビルを望む。視覚的に天井が見えず、屋外に居る感じ。
(左)アトリウム側から外を望む。柱の大きさがよく分かる。(右)同じくアトリウム内部より、向かいの天神ビルを望む。視覚的に天井が見えず、屋外に居る感じ。

以上


 *写真はすべて筆者撮影。


*記事掲載:2025年5月2日

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