「コラム」 私のおすすめ空間(第14回)
- tokyo.kinryokai
- 1月11日
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更新日:2月10日
門田睦雄(昭和40年卒)
品川セントラルガーデン
これまで大崎の2施設を見ましたので、近くの品川駅前に広がる広大な緑地を紹介しましょう。それはJR品川駅東側にある「品川セントラルガーデン」です。2003年竣工ですので既に20年以上経って、樹木は立派に生育し帯状の樹林となっていますが、品川駅東口地区再開発という大型事業の一環として計画されました。

JR品川駅港南口を出ると、JRの線路に沿って西側に品川グランドコモンズ、東側に品川インターシティーという、400mにわたって直線状に並ぶ超高層ビル群があり、その間に挟まれた緑地が品川セントラルガーデンです。幅45m、長さ400m、面積1.8haと規模が大きく、両サイドの2階レベルにはスカイウェーという歩行者デッキが通り、両デッキは途中2箇所で横断ブリッジにより結ばれています。これだけの規模になると、法規制はじめ関連する要素が多く、完成に至るには幾多の難題があったことでしょう。時間をかけてそれを乗り越え、実現させたことに何より敬意を表したいと思います。

朝の通勤時間帯には、品川駅構内の大通路の洪水のような人の流れが、この2列のスカイウェーを経て各ビルに吸い込まれてゆきます。通勤者はセントラルガーデンの樹木を見下ろしながら歩くので、林を抜けて行くような爽快な気分になることでしょう。通勤時に快適な場所を通るのもその地域の魅力です。これだけの規模の施設に対して、これだけの快適で明快な動線を設けたことは、都市計画の成果ですし、何もないところに絵をかいて都市を創る、都市計画のだいご味です。

この緑地は、都市計画上は、“都市公園”、“公共空地”、“壁面後退部”という位置付けになるようです。設計者の説明によると、当初から「均質空間の“杜”と、変容性のある”道“で構成された“みち森広場”をイメージしたそうです。具体的手法としては、一辺23mの樹木のユニットとその間に挟まれる色々な形の広場で構成されています。

昼休みには多くの人がビルから出てきて、1階レベルの杜に集まります。地面から木々を見上げると、上から樹冠を見おろしたのとは全く異なる印象です。お弁当を食べたり、友人と語らったり、一時の昼寝を楽しんだりと、くつろぎの空間になります。
この計画を図面で観た時には、素晴らしい計画だと思いましたし、都市装置として極めて立派なものです。ただ自分で実際にこの杜に降りてみると、悪くはないけれど今一つ物足りないのです。新宿三井ビルやミッドタウン日比谷の前の広場のような、うきうき感が湧いてこないのは何故だか考えていて、「そうだ、ビルの1階部にヨーロッパの街々にあるカフェが無いからだ。」と思い当たりました。ここでは建物内の人の気配が、ガラスの壁に遮られて外に伝わらないのです。もし森とビルの境界にテーブルと椅子が並んだカフェがあったら、両者は一体化し森にも賑わいが出るのではと感じました。これは私一人の感覚かもしれませんので、皆さん行ってみて感想を聞かせてください。
最後ですが、大阪駅北側には今春、日本を代表するような緑の都市空間「グラングリーン大阪」が完成します。一方リニア新幹線が開通すれば、品川は東京の玄関になります。その玄関には既に「品川セントラルガーデン」があります。両者は日本を代表する、東西の自慢の空間になることでしょう。
以上
*記事掲載:2025年1月11日
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