商談で訪れた社長室には美術品が・・・!
「私は美術はわからない」お会いした方々からよくお聞きするフレーズです。
そのわからないが少しでも(わかる・好きになる・楽しめる)よう美術アドバイザー
として幾つかのポイントをお教えしたいと思います。
美術館や展覧会で作品を見るとプレートに詳細が明記されているので
これは「○○先生の京都風景だ・・・」などとわかりますが
訪れた場所で見た絵、素敵だなと思ってもその芸術家作品名の答えは難しいですね。
重要な商談で社長室へ入ると綺麗な絵が展示されている場合や、訪問先で美術品と
遭遇した際に、「綺麗な絵だけど・・・誰の絵だろう?」そのような経験はありませんか?
美術はわからないから、商談以外で絵画の話になったらどうしようかと不安が過ります。
その不安を払拭する為に美術品を見るコツを学んで一歩一歩進み楽しんで鑑賞しましょう。
◆第一歩として、絵を見る際の「ポイント」をご案内します。
ある日実家の倉庫からなにやら高そうな絵が出て来ました。もしかしたら高額な美術品
かもしれません。その際のお勧めする確認方法とは・・・!
◇絵を見て誰が書いているのかわからない・・・
その際には落款の文字で判断するのが一番です。
私達美術商も必ずこの落款を確認します。
落款とは・・・ 簡単に言うと絵に書かれている先生のサインです。
画廊主はこの落款で制作年代を判断することが多いです。
画家のサインの書き方には年代別に変化があり、押されて
いる印は鑑定際には最も重要な確認ポイントになります。
※なんでも鑑定団の鑑定士(友人のT氏)がハンカチで口を押さえて
この部分を見ているシーンをテレビで良く見かけますね。
◇それでもわからない・・・ → 額の裏のシールを見ます。
日本画の多くの先生は画面には姓名の名(平山郁夫 → 郁夫)としか画面には
書いていません。
しかし裏のシールには姓名を書いている場合があるのでわかる場合があります。
額装の裏にハガキサイズ位の紙(シール)が貼られていることが多いです。
シールとは・・・絵の裏に貼っている作品画題と先生のサインを書いた紙の事です。
共シールですか?と画廊主が聞くことがありますが・・・
これは 絵を書いた先生の直筆文字が 共シール。
鑑定家が書いた場合は ○○鑑定シールと呼びます。
※添付写真は「棟方志功画伯直筆のタイトル」
◇まだわからない・・・箱を見ましょう。
百貨店等で購入の作品には絵が入っている箱の横に
画家の名前が書いて場合があるので見て下さい。
◇どうしてもわからない場合は画廊に聞きましょう。
その際のポイントは、絵の雰囲気を伝えて画面サイズを測って下さい。
写真は(画面・落款・シール)を撮影して下さい。
絵を良くみて(紙地か絹地または キャンバスか)
購入の経緯がわかると更に良いです。
多くの画廊は、問い合わせの際に細かく相談者の連絡先等の個人情報は聞いてこないと思いますので勇気を出して連絡してみて下さい。
◆美術を名脇役達から学んで行きましょう。
和風の床の間に掛軸を掛けると素晴らしい和空間が広がり、さらに描かれている絵画の 世界に引き込まれていきます。絵を引き立てる ~裂の演出~ で華やかで品のある掛軸は観る者に感動と喜びを感じさせてくれます。今回はその裏方に光をあててみました。
~綺麗な美術品~ を保管してくれる 名脇役達 です。
掛け軸の①
◇右端から うわ覆いの裂・・・ 大切な画家直筆の箱書き墨の文字を包んでくれます。
◇右から2番目 「紅梅」・・・ 絵の次に大事な「 箱書き 」です。
質の良い桐板に高価な墨で・・・独特なバランスで先生が書いた作品の画題です。
裏面には先生の「サインと印 」が書かれています。
◇真中のちょっと変わった 丸棒 これは「太巻」と呼ばれ 掛軸を巻いた際に細くな
らないように通常より太く巻いて中の絵を守る役割をする桐の棒なんです。
◇左から2番目 掛軸を入れる内箱です。軸装が休むお布団ですね。 この中に和紙で
ふんわりと包んで保管します。
◇最後に一番左 ~外箱~ です。 高価な軸は通常二重箱に入れられています。
素材はどちらも熱や火に強い桐で作られ外箱はさらに漆を塗り美術品を大切に
守ります。
掛け軸の②
◇紐が巻かれた、軸装が入っています。通常このような感じで保管されています。
高額な掛軸はこのように二重の桐箱に納められています。桐は防虫効果もありますが
最大の利点は燃えにくいので、中の美術品を守ってくれます。
中の表装は、金蘭裂を用いた軸装がもっとも高価な仕立てです。金糸をあしらった裂で
時々キラキラと光るように見えるのは、合金糸(意図的に加工された)これは安価な裂
気品良く光る金蘭とは異なるので観察が必要です。
◆名脇役達が 裏方で頑張っています◆
☆ 主役の紹介も少し・・・☆
大分県出身の 福田平八郎 画伯作 「紅梅」 短冊サイズに描かれた~爽やかな作品~
先生の中期の頃、昭和20年代(落款がまだ細めの書体)に制作されました。
金蘭裂や金砂子を用いた京表具の様式を取り入れた掛け軸です。
◆有名画家 上村松園先生作品は高価な表装にも注目です。
金襴をあしらった品格ある輝きをもたらす「 裂 」に目を向けませんか?
表装は大まかに、上下・中・一文字と三種類の裂が用いられています。
その中で、絵の一番近くに使われているのが「一文字裂」です。
(画面の上下に配置されて、2~3センチの細長い特徴的な裂)
種類は幾つかありますが、松園作品には独自の裂で表装が彩られています。
◇竹屋町裂(たけやまち きれ)
元和年間(1615年頃)に大阪堺に来た中国人から技術を得て中国の金紗(きんしゃ)を真似して京都御所の南竹屋町で織られた 名物絹織物。 日本独自の和製 金紗
大変高価な竹屋町裂に幾つかのアレンジを加えたのが、松園裂(しょうえん きれ)
昭和10年~25年頃に制作された作品には高価な表装が用いられています。
その文化が感じられるので、出来れば表装のままでこれからも楽しみたいですね。
表装と太巻き軸
軸作の両側2つ白く見えるのが、象牙の軸先です。近年ワシントン条約で象牙の取引規制が行われているので、過去の軸装から付け替えることが多くなりました。
絵具を保護する意味で、掛け軸は細く巻くのではなくて、太巻と呼ばれる桐で作った芯を 用いることをお勧め致します。絵をゆったりと巻くので作品を痛めません。他の美術品にも使用できますのでご要望がございましたらご相談下さい。
◆商談で訪れた社長室には美術品が・・・!
先ほどの取引の社長室で、悠然と展示されている絵画は誰の作品かの答えですが
正解はなかなか難しいですね。商談をスムーズに進める為には・・・・!
◇素直に「綺麗な絵ですね。有名画家の絵ですか?」聞いて、必ずその絵を褒めましょう。
◇先方の社長が作品を自慢げに説明されたら、その話に共感して美術品を堪能しましょう。
◇作品の良いと思う一部分を見つけて、その感動を伝えると話が穏やかに進みます。
美術品から感じるイメージは人それぞれ異なると思いますが、作品の所有者は展示されて
いる絵を褒められると、とても気分が良くなります。
もし、今回のような場面で美術品を出会ったら、先方が説明する内容をメモに残して更に
褒め言葉を探す際には「とくなが美術」へお問い合わせ下さい。
専門家としてその社長がもっと喜ぶコメントをご教示できるかも・・・!
「とくなが美術」のホームページでは、「私は美術がわからない」方々が
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表装の勉強を住み込みで行った、京都御所近く老舗表具店「表玄」
店名の由来は表具のプロ(玄人)から命名されたそうです。
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