門田睦雄(昭和40年卒)
新宿三井ビル前広場
今回は超高層ビルの足許の広場として代表的な「新宿三井ビル前広場」を紹介します。日本の超高層ビルの黎明期、まだその地上空間がさほど注目されていなかった時代に、颯爽と出現したこの空間は、「ビルを超高層化することで、足許にこんなに豊かな空間が生まれるのだ!」との感激を世に与え、建築学会賞も受賞しました。
道路側から広場を望む。背後が新宿三井ビル。
この広場は前面の道路と超高層ビルの間にかなりの面積で展開し、道路から見ると少し低い「サンクンガーデン」という形をとっています。床仕上げはレンガ敷きで、硬い質感ですが、欅を中心とした樹木がたくさん植わっていて、それも年月を経て大きく育ち、都市の中の森ともいえる雰囲気です。道路側の壁面は滝になっていて、夏には涼しげなしぶきを上げます。その森の樹木の間にはテーブルと椅子が点在し、「休んで行きなさい」と誘うようです。
広場を横から望む。地下1階レベルの周辺には飲食関係の店が並び、昼休みには特に賑わう。
更に素晴らしいのは立体的な構成で、新宿駅から新宿中央公園に抜ける道路の歩道から、広場の全景を俯瞰できるようになっています。春、秋の屋外が快適な時期はもちろん、夏は大きく育った欅の木陰が涼しく、冬は囲まれて風が来ずに日差しが暖かく、ここに誘い込まれるように、年間を通して多くの人に利用されています。
(左)左に見える2階レベル通路より、右側の低い位置に広場の樹木が見える。
(右)広場側から通路を望む。写真上に見えるのは2階レベル通路。
ビル側の正面にはステージにもなる一段高い場所があり、ここで音楽演奏を行う時には、広場側の椅子は満席になり、賑やかな劇場に姿を変えます。このようなリッチな空間になっているのは、着想と共にデザインが素晴らしいからでしょう。完成してからほぼ半世紀、木々の成長と共に一層貫禄が出てきたこの広場は、東京を代表する広場といっても良いでしょう。
(左)正面の一段高いところがステージになり、広場全体が劇場のように盛り上がる。
(右)道路側の壁面の滝。夏には水が流れ、広場全体が涼しい雰囲気に包まれる。
以上
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