大河ドラマ「青天を衝け」の作者大森美香さん、そして「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞した町田そのこさんと京築ゆかりの作家さんが目覚ましい活躍です。
町田さんの快挙を伝える毎日新聞掲載記事を同社の松本昌樹さん(S56年卒)より送って頂きましたのでご紹介します。
地元書店主ら喜びの声
全国の書店員の投票で決まる2021年本屋大賞に京都郡在住の作家、町田そのこさん(41)の「52ヘルつのクジラたち」が選ばれた。発表から一夜明けた15日、地元の京築地域や、作品の舞台として登場する北九州の書店関係者からは喜びの声が上がった。
生まれ育った京都郡で、3児の母として暮らしながら大賞を射止めた町田さん。みやこ町豊津で児童書専門店「瓢鰻亭(ひょうまんてい)・ひまわりこども」を経営する前田賤さん(77)は「本が心の支えだったと聞いた。町田さんが書くことで生きる力を得る人がいる。地方から絶えず発信し続けて」と今後の執筆活動に期待を寄せた。
また、行橋市道場寺で書店「BOOK BOX」を営む西村勝さん(64)は「午前中に7冊の予約が入り、さっそく発注した。京築地域に文化の華が開いた。誇らしい」と受賞をたたえた。
「大快挙です」と本屋大賞受賞を喜ぶのは、門司区本町の金山堂書店の菅中誠二さん(48)だ。町田さんが2020年夏に出した初の書き下ろし文庫本「コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店」(新潮社)はタイトルの通り、門司港が舞台。店で地元ゆかりの作品としてお薦めするポップを作って売り出すと、偶然にも町田さん本人が来店したといい「すごく喜んでくれた。町田さんはほんわかした印象の一方、作品の描写は鋭く、そのギャップが魅力」と話す。
門司港に生まれ育った菅中さんは「いつも見る風景も、本を読んだ後だと親しみが湧いて違って見える」と語った。
小倉北区馬借1のブックセンター クエスト小倉本店は受賞が発表された直後の14日夕、店舗入り口正面に受賞作を並べる特設コーナーを設けた。町田さんのサイン色紙や手作りのポップで飾り付け、受賞を祝った。一夜明けた15日も、店を訪れた客が次々に足を止め、作品を手に取っていった。
店長代理の道免信男さん(42)によると「コンビニ兄弟」が刊行された20年夏、町田さんの作品を同じ場所に平積みした。すると、店舗を訪れた町田さんから「この場所に平積みされるのが夢だった」と告げられたという。
町田さんは学生時代から同店に通っていたという。道免さんは「同じように夢を持つお客さんに、町田さんのことを知ってもらえたら」と話した。
北九州市立文学館(小倉北区城内)でも15日、常設展示室内にある地元ゆかりの現代作家を紹介するコーナーに、町田さんの受賞を知らせるボードを置いた。今川英子館長は「この地域に住み、地域を愛し、地域を舞台にした作品を発信してくれていることがうれしい。新しいタイプの作家の誕生を喜びたい」と語った。
毎日新聞掲載記事
記者有情 「街の本屋」
高校までを過ごした古里に駐在記者として赴任して1年。久々に明るいニュースが飛び込んできた。京都郡在住の作家、町田そのこさんの本屋大賞受賞だ。著名作家が選考する出版社主催の文学賞とは違い、本屋対象は書店員が「今読んで欲しい本」を選ぶ。受賞作はどの賞よりも売れ、映像化も相次ぐ。
その書店、とりわけ地方の小規模書店の衰退が続く。京築地区の行橋市の中心商店街には、貴社の高校時代4軒の書店があったが、一般販売する店は今はない。近隣の町の書店も教科書の納入などでなんとか存続しているのが実情だ。教科書のデジタル化で紙の本の納入が減れば打撃を受ける書店もあるという。地域の文化を担う「街の本屋」の復権を願う。
松本昌樹
毎日新聞掲載記事
52ヘルツのクジラたち 町田そのこ
虐待されてきた主人公が移り住んだ大分の田舎町で、母親から「ムシ」と呼ばれ虐待を受ける少年と出会う。
普通のクジラは39ヘルツで鳴くのだが、52ヘルツで鳴くクジラがいて高音のため他のクジラには自分の鳴き声が聴こえない。
主人公も誰にも聴こえない52ヘルツの声をあげ、孤独感に苛まれていたが、過去に唯一声を聴いてくれる人がいて救われた。
そんな経験から、少年の声が聴こえる人を探しはじめる。
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