昭和55年卒の小正路淑泰氏が在校当時から興味を持ち、研究を始めたという堺利彦を筆頭に葉山嘉樹、鶴田知也、田原春次ら本校出身の社会主義活動家、プロレタリア作家研究の集大成ともいうべき書である。
論文集であり、読み物としてはいささかハードルが高い感は否めないが、社会主義運動の草創期に活躍したという認識程度しかなかった堺利彦。「淫買婦」の映画化によって改めて評価を高める作家葉山嘉樹。その後を追い「コシャマイン記」で第3回芥川賞を取った鶴田知也。被差別部落出身で水平運動(被差別部落解放運動)指導者の田原春次。さらにはベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)で活動した前田俊彦などの活動を知る上ではこの上ないものだと思う。
彼らを社会運動へ向かわせたものは何か。生誕時、幼少期の境遇を考えた時、格差や差別への反骨だったであろうことは想像に難くない。
彼らの活動を知ることは、現在まさに拡大しつつある格差や差別に対するアンチテーゼとなるかも知れない。
最後に、これは私感ではあるが母校の先達を世に知らしめたいという著者の気持ちも汲み取ることができる。
大森英通(S52年卒)
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